大人のレンアイってなんですか?

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 千佳子の肩に顔を埋めていた槇はその顔をあげた。鼻が触れる距離で見つめ合い、どちらからともなく顔を傾ける。目を閉じて二度三度唇を重ねる。  涙に濡れた頬のせいか、少ししょっぱさを感じた。  「……間違ってもいいの。傷つけあってもいいの」  千佳子はここで槇にちゃんと説明した。上部だけで伝えたところでこの男の傷を癒すことはできないだろう。だからこそ本心を伝える。  「その度にちゃんと向き合ってくれればそれでいい。人間だから『変わること』はあるわ。でも今日みたいにちゃんと説明して。納得した上でちゃんと答えを出したいの。もちろん、私もちゃんと言う。隠し事はしないわ」  千佳子は槇の目を見てしっかりと頷いた。槇は目を丸くすると「ふ」と口元を緩める。  「お前は嘘つくの下手そうだもんな」  「そうね。だからなるべく嘘は吐かないようにしてる」  槇は小さく笑いながら甘えるように千佳子の首筋に顔を擦り付けた。  その仕草がまるで野良猫が懐いたよう。自分を信頼してくれている感じがして嬉しくなる。  「そういうところ本当男前だな」  「よく言われる」  「……もっと可憐で可愛い恋人がよかった」  「殴るわよ」  思わず肩より上に握り拳を作った。そんな千佳子を見て槇は楽しげに笑う。  「だって嫌だろ。自分より男前って。金持っててさっぱりして付き合いやすくてさ」  「だから貰い手がなかったのよ」  「自分で言うな、自分で」  槇は千佳子の握りしめた手を包みながらそれを下ろす。  そしてもう一度千佳子が嫌がらないことをわかっていながら押し付けるように唇にキスをした。  少しカサついた唇が千佳子の唇を撫でていく。口紅が取れて乾いた唇が槇の体温でじわりと暖かくなるのを感じた。いつもの、身体を重ね始めるような渇望したキスではない。飢えた獣のようなキスとは真逆の、安心感でお腹いっぱいになった子犬が甘えるように舐めるようなそれだった。  千佳子はこんなふうに愛を伝えてくれる槇を愛おしく思いはじめる。  ついさっきまで太々しくブスくていた顔が今はただ無心に千佳子に甘えていた。  槇の手が勝手知ったるように千佳子のブラウスの下から潜り込む。  片手でパチンとホックを外すと背中を撫でながら千佳子の目を見つめた。  この雰囲気で「だめ」なんて言うほど野暮ではない。もう身体の隅々まで知られている間柄なのだ。今更恥ずかしがることはなかった。  「んくっ」  槇の舌が千佳子の口内を撫で回す。槇は千佳子をソファーにやさしく押し倒しながら先ほど解放された膨らみを手のひらに包み込んだ。手つきは優しいのに、どこか早急さを感じさせるようにキスが続く。  息が苦しくて酸素を求めるように顔を逸らした。槇の唇が舌が、千佳子の首筋から鎖骨に滑っていく。  白い肌に色づく紅い花。チリっと伴う痛みが嬉しかった。千佳子はその痛みに溺れながら、自分の胸や腹に顔を埋める槇の頭を撫で回した。  「…おい」  だけどここでピシッと槇が動きを止めた。せっかくいい感じに身体に熱が集まってきたのに。千佳子は「なに?」と槇のつむじ見ながら返す。  「お前はアイツと寝たのか」  人のことをあれだけ批難したくせに?と槇のこめかみに青筋が浮かんだ。        
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