エピローグ

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 「明日は?」  「友人とランチしてくる」  千佳子は明日綾乃と会う予定だった。なんとか丸く収まったことを伝えると「おめでとう!飲もう!」と返信が来たのだ。綾乃のこういうところが好きだ。千佳子は「ありがとう!飲む!」と返した。  綾乃はもちろん、子どもを連れて来れないので旦那と都合を合わせてくれたんだろう。そしてその会合がようやく明日なのだ。もちろん夜は難しいので昼飲みではあるが。  「ふーん?」  「あ、信じてないわね」  「そんなんじゃねーよ」  槇はフンとそっぽをむく。千佳子は面白がるように頬を突っついた。  「何よ、言いなさいよ」  「言わねえ」  「えーー、教えてよ。浩平♡」  千佳子は缶ビールをテーブルに置くとわざとらしく胸を押し付けた。  部屋着は槇のTシャツだった。つまりメンズ。槇にはちょうどよくても、千佳子にとって大きい。ゆったりとしたTシャツはもちろん襟元も開いている。普通にしていても胸元の膨らみの影が見えるのだ。槇と千佳子の身長差を考えれば姿勢によって深い部分まで見えてしまうだろう。自慢できる大きさではないが、ここ最近少し大きくなったのだ。槇様様ではある。  千佳子は「ねえ」と槇に擦り寄りながら顔を近づけた。  「…ぐっやめろ」  「浩平♡」  そんな槇は自分のTシャツを着た千佳子に「浩平」なんて呼ばれるとたまったもんじゃない。まじめに付き合ったことがなかった弊害がここにも現れてしまい、どうすればいいのか分からないのだ。  適当にあしらえば千佳子が傷つく。そういうつもりはなくても自分の言葉は自分が思っている以上人を傷つけていたことを槇は過去の経験から知っていた。だからどうやってあしらえばいいのか分からないのだ。そして本気で嫌なわけではない。ここで「ひとり置いてくのかよ。寂しいじゃねえか」なんて言えるキャラならここまで困ることはなかった。たとえ嘘でもそんなキザな言葉は吐き出せない。    「浩へ」  どうすることもできなくてとりあえず唇を塞いだ。重ねた唇を二度三度味わうように合わせる。千佳子の目元がトロンと溶けて応えるように槇の首に腕が回された。槇はそれをいいことに千佳子の服の中に手を潜らせると地肌を撫でる。腰を背中を撫でて、いつものようにホックを外した。  だけどここでいつもと違うのは千佳子だった。その腕を掴むとやんわりと拒絶する。千佳子は槇に「ねえ」と先ほどの質問の答えをねだった。  「まだ聞いてない」  「……」  「教えてくれたっていいでしょ?」  「……別に何もない」  「嘘」  「どうして嘘つかなきゃいけないんだよ」  「顔がイヤって言ってるもの」  「言ってねえ」  「言ってる」  「言ってねえ」  
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