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「お前は、一体何をさせたいんだ…っ」
カフェに迎えに来た槇は想像通り不機嫌だった。でも綾乃を紹介する時はにこやかな笑みを浮かべていた。槇は千佳子の会話の中で時々登場する「綾乃」をさりげなくチェックしていた。千佳子はもちろんそれに気づいていたが、値踏みするようないやらしい視線ではなかったので咎めなかった。
帰宅途中、夕食をテイクアウトしたのに、食べる前にベッドに連れ込まれた。
槇は相当お怒りだったらしい。感情をむき出しにして、でも心は正直に「寂しかった」と告げていた。
「”寂しい”って言いなさいよ」
「寂しくなんかねえ」
「寂しくて、確かめたくて抱くんでしょ?」
「ちがう」
「認めた方が、らく、なのに」
熱い楔が打ち込まれるたびに鼻から抜ける甘い声に下腹部が膨らむ。
槇は千佳子の細い腰を抱き直してぐりぐりと昂った自身を押し付けた。
下生えが擦れるたびに千佳子の甘い声が耳を通り抜ける。それでいて自分が気持ちいいように、千佳子のいいところを擦りながら腰を揺らした。
認めろ、と言うならとっくにもう認めている。
でも認めたから、もっともっと深みにハマってしまったのだ。そこからどうやって抜け出せばいいのかわからないほど槇は混乱していた。
「浩平」
千佳子の身体が何度が震えたあと奥歯を食いしばり熱を放出させた。快楽と共に開放感が全身を巡る。槇は乞うように千佳子を抱きしめた。
「寂しいって言ってもいいの。恥ずかしくない。私は…嬉しいわ」
汗をかき薄紅色に頬を染めた千佳子が倒れ込んできた槇の身体を抱きしめた。
千佳子の中がキュウと締まる。せっかく熱を放出したばかりなのに、潜り込んだままのものがまた熱を取り戻し始めた。
「……週末にくるっていうから予定をあけてるんだ。なのにお前は平気で遊びに行く」
「浩平も遊びに行けばいいじゃない」
「来るって言われたら、家にいるだろう」
律儀な槇に千佳子は笑う。だけど笑われた槇は何がおかしいのかわからなかった。
「毎回出ていくわけじゃないじゃない」
「大体どっちかいねーだろ」
「そうだっけ?」
「先週も、友人に会うって」
槇は自分で言いながらひどく子どもじみた態度だと気づき急激に恥ずかしくなった。そのせいで千佳子の中に潜りこんだソレもしゅんと萎えてしまう。
千佳子は「よしよし」と槇の汗ばんだ髪を撫でた。
この人はどうしようもないほど心は子どもで、そのまま大人になってしまった。少々というかだいぶ面倒くさい。でも今は可愛くて仕方がない。
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