白よりのグレー

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 子どもを考えるならもうそろそろタイムリミットだった。  今は40代でも初産の人は増えてはいる。だけど先のことを考えるとあまり喜べないのは現実だ。  「子どもが20歳で親が60過ぎか。結婚式まで生きれたら万々歳ね」  そもそもまだ相手もいないのに、と苦笑いが溢れる。  手元の携帯を見てまた溜息が溢れそうになった。送り主は綾乃だった。  近々会おう、という話をしているが「旦那に予定調整してもらうね」と返信がきた。子どもを旦那に預けて身軽に出てきたい、とのことだった。  綾乃は昨年娘が産まれてママになった。今も時々メッセージはやりとりするがほとんど会えていない。だが、最近旦那が綾乃に一人時間を作ってくれているらしく綾乃からお誘いが来たのだ。  嬉しい反面、会うのが怖かった。  会えばきっと虚しくなる。この間まで同じ畑にいたのにちょっと、いや、かなり悔しい。それを隠せるだろうか。自信がない。  今では兄(45)の娘(20)にすら負けそうな勢いだ。 両親も最近はもう嫁に出すことを諦めていて何も言ってこなくなった。それならそれでいいじゃないと思うがやっぱり一人は寂しい。  40を過ぎると残りの男たちももう訳ありばかりだ。自分を棚に上げて人のこと言えないけど、とグラスに手を伸ばして、そのグラスが空になっていることに気がついた。  「「すみませーん、お茶わり」ください!」  綺麗に声がハモった。声の主を見ればちょうど柱の影にいた男性と目が合う。影になっていて見えなかったがいい声だった。チラッと見えた顔もそれほど悪くない。    
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