大人のレンアイってなんですか?

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 ________ピンポーン  ドキドキしながらマンションのインターフォンを押した。でもその音は反復されるばかりで応答されることはなかった。何度か繰り返し押してみたものの結果は同じ。時間は未婚のふたりにしてみればまだ自宅に帰るのは早い時間かもしれない。帰ってきていないのか、と千佳子は携帯を取り出して画面をスライドさせた。  メッセージアプリを開いてスクロールした。いつもならメッセージアプリを開けば上の方に位置する槇のアイコンが今はもう2回ほどスクロールしないといけないぐらい下になっている。それをタップしてメッセージを打ち込む前に電話のマークをタップした。  〜〜〜〜〜♪  「今どこ?」「会える?」そんな言葉が喉から飛び出てきそうだった。  いつ出るだろう、とそわそわしながら呼び出し音を聞き続ける。  しかし、ついぞ受話器を取る音は聞こえなかった。耳に届くのは軽快な音だけ。   「……なによ、出なさいよ」  千佳子は腹が立って何度か掛け直した。でも繋がらなかった。  いつもならすぐに出てくれるのに、今夜に限って出ない。  「馬鹿野郎!!」  千佳子は携帯に向かって叫ぶとそのままポケットに入れた。  でもすぐに携帯が振動する。慌てて取り出して画面を見た。  かけてきたのは佐野だった。画面を見て落ち込んだがそれを声に出してはいけない。千佳子は小さく深呼吸をして画面をタップした。  「…もしもし?」  『あ、もしもし?今平気ですか?』  「大丈夫よ」  『よかった。あの、今週末時間ありますか?よかったら出かけませんか?その、最近ずっとその…ホテルばかりだったし、ちゃんとデートしたいと思って』  千佳子は佐野を素直に尊敬した。曖昧な関係でいる千佳子をこんなふうに誘える彼がすごいと思う。だからこそ申し訳なくも感じた。今の千佳子はショックの方が大きい。それは槇に会えなかったから。会いたくて家に来たのに電話にも出てくれない。しかも、佐野から電話がかかってきたことに対して落ち込んだのだ。「槇じゃなかった」と。失礼にも程があるのに。  「…デート?」  『天気もいいですし、外に行きましょう!山梨のワイナリーとか』  「……やっぱりお酒なのね」  『え?駄目ですか?ワインが好きだって前に言ってましたよね?』  「昔ね」  『でも飲めますよね?』  「飲めるけど」  『じゃあそうしましょう!』  佐野も最近千佳子のことを理解してきたのか、自分の意思を押し通すようになってきた。でもきちんと千佳子の反応を窺っていることはわかる。それに嫌な推し進め方ではない。  _______詳細は、メッセージで送りますね。  佐野はそう言って通話を切った。  千佳子は未だ着信が返ってこない携帯眺めて、そのまま槇の住むマンションを振り返って見上げる。槇の部屋はどのあたりだったかと漠然数えて立ち止まって眺めた。どのへんなのか正直わからない。でも灯りのついている部屋は少なかった。  千佳子はマンションに背中を向けるとさっき歩いてきた道を再び歩き始めた。
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