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「シャウラ」
「はい、ラミア様」
試しに呼んでみると、想像した通りの反応が返ってきた。シャウラ。『白夜妖戦記』に出てくる敵幹部の一人で、魔王の娘ラミアの従者。
……わかるぞ。『白夜妖戦記』にその要素はなかったけれど、私は他のWeb小説だって読んでいた。これはズバリ転生ものだ! しかも主人公側じゃなくて、敵側のキャラに入っちゃうやつ!
事態が飲み込めてきて、私は急いで広い円卓を見渡した。暗がりに目が慣れてくると、薄闇の中にいくつかの輪郭が浮かび上がってくる。
「ラミアちゃん大丈夫〜? 俺が人間にやられたの、そんなにショックだった?」
遠くて姿は見えないけれど、口調で誰だか判別できるぞチャラ男。
魔王軍の円卓に座れるのは七人で、ラミアに侍っているシャウラを入れると八人。魔王様の御前だしチャラ男以外は黙っているけれど、みんなそれらしい影だと思う。
確認が進むにつれ、頭痛が治ってきた。すると段々テンションが上がってきて(だって好きな世界の好きなシーンに飛んだんだよ)、二つ隣に鎮座する魔王のお顔を拝見する勇気が湧いた。
「ラミア」
「あっ? CVそちらだったんですか?」
やっちゃった。敬愛する魔王様に名前を呼ばれて、『はっ!』って格好よく返事するつもりだったのに。
小説の世界は心の声が漏れやすいのか? 私はむしろ素っ頓狂な声で、魔王――もといラミアの実父に、それを問うてしまった。
「……シーブイ?」
わずかに首をかしげる魔王に、私は恥ずかしくもうなずいた。なんというか、魔王属性の声ってあるじゃんね。
私が履修してきた作品はだいたい二通りに分かれてて、低くて渋めでどっしり構えたおじさまボイスか、主人公たちを翻弄しそうな食えない青年ボイス。
「ラミア。お前は相変わらず、訳の分からないことを次々と……」
ちなみに父は前者だった。外見の描写的に後者っぽかったんだけどな(ちなみに『白夜妖戦記』にドラマCDやアニメはありません。書籍化もまだだったからね)。
まぁ、胡散臭いイケボだったら敵味方関係なく裏切りそうだし、こっちでよかったのかもしれない。作品追ってたから、全キャラの大体の行動は読めそうなものですが。
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