恋敵とお留守番

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樹々兄がいない姫塚家は、炭酸の抜けたコーラのようだ……。 「なので、連休中は大人しく引き籠ることに決めました!ハイ、解散!」 姫塚家で夕飯後、羅々にそう告げれば、ガシリと頭を鷲掴みにされた。そろそろ頭蓋骨粉砕するんじゃないだろうか。ウム。 「何がな・の・で・だ。まぁ……それは良い。んで?本音は?」 羅々が凄みを増しながらそんな台詞を呟く。 私は「嫌だなぁ……本音ですよー」と目線を逸らしながら言葉を返した。 「オカシイナァ?風の噂で、お前が明日から大阪に乗り込むって話を聞いたんだがな?」 「え?誰に聞いたの?ゴーヤ?」 ポロリ発言をした後、慌てて口を手で塞ぐ。 羅々はスーッと目を細め、鷲掴みしている指に力を込めた。 イテテテテテ…… 「俺が朝言った事、覚えてるか?胡桃さんよぉ?」 「オイカケマセン……オウチデイイコニマッテマス……」 「で?明日……何だって?」 「大阪でラーメンフェスのお手伝い!イエーイ!」 「イエーイ!じゃねぇ!」 ゴツンと羅々の拳骨が落ちた。 羅々は、女の子に対する扱いを改める必要があるよ、本当に! 頭を押さえながら、抗議の声をあげれば「はぁーっ」と深いため息を吐かれた。 「……言うだけ無駄だって知ってたわ。そういう奴だったなお前は。」 「迷惑かけないから、行かせて!」 「この次点で、迷惑以外の何者でもねーんだがな……仕方ねぇ、俺も行く」 「ん?」 気のせいかな?羅々から耳慣れないワードが聞こえた気がするけど? 小首を傾げれば、再び頭を鷲掴みされた。 「気のせいでも何でもねーよ。お前の監視として行くっつってんだ!」 「うわーやっぱりかー!でも急に人数増えても大将に迷惑が……」 「ああ……それならもう話はついてる。」 「へ?そうなの?」 え?私の知らないところで、連絡網が回って、話が進んでいたということですか?オソロシイ。 「樹々には言うなよ。俺が殺される。」 「ら……ラジャー」 そんな会話をしていたら、突然携帯の着信メロディーが流れる 樹々兄からの電話だ! 「オイ……わかってるだろうな?」 羅々が凄みのある表情で脅してくるので、コクコクと頷き、 私は通話ボタンを押した。 「はい!」 「あら、元気なようね。大人しくお留守番出来てて偉いわよ、胡桃」 ああ……もう既に懐かしい樹々兄の声だ。 私が犬なら、尻尾がちぎれんばかりにブンブン振っているに違いない。 嬉しさに口元が緩む。 「今日はもうイベントは終わったの?」 『ええ、大繁盛だったわよー、疲れたわー。あと二日頑張るわね、ふふ』 「そっか……お疲れ様。ゆっくりお風呂に入って、疲れとってね」 『ありがとう、胡桃……ところで、寂しいって叫ばないわね?』 樹々兄のその言葉に、ギクリと心臓が跳ねた。 「さ……寂しいよ!迷惑かけないように、我慢してるんだよ!」 『そう?なら良いけど……変な計画立ててたり、してないわよね?』 !!!!!! 千里眼のように行動を読んでいる樹々兄に恐怖を覚える。 あ……しまった、占い師だったわ……ヤバイ 冷や汗を流している私から羅々が携帯を取り上げた。 「この駄犬はしっかり管理しとく。お前は気にせず仕事がんばれ」 『そう?なら大丈夫ね。わかったわ、あと二日、胡桃を頼んだわね』 「ああ。逃げ出さねーように、首輪つけて繋いでおく」 何気に怖いワードの会話をしながら、羅々が電話を切った。 ナイスだ!羅々! フーと大きく息を吐き、私は羅々から携帯を受け取った。 樹々兄には嘘はつけない。 本当にバレずにすんで良かった。 ◇◇◇ 翌朝、集合場所のラーメン屋へ羅々と向かう。 そこには、何故か豪屋さんと愛島さんの姿があった 「え?何?このメンツ」
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