1人が本棚に入れています
本棚に追加
いざ!大阪へ
気になる事は多々あるが、まずは大将へ挨拶だ。
私は羅々の腕を引き、せっせと車に荷物を積んでいる大将の元へ挨拶に向か
った。
「おはようございます、お世話になります」
「おう、おはようーさん。宜しく頼むな!」
早朝とは思えないくらい豪快な笑顔で迎えてくれる大将は、気さくで良い人だ。絶対ラーメン屋の常連客になって通いまくるよ。うん。
そんな決意を胸に刻んでいたら、羅々がぽすんと私の頭に手を置いた。
「初めまして、豪屋君の友人の姫塚です。この馬鹿が色々ご迷惑お掛けしました。本日は、宜しくお願いします」
「おおー、兄ちゃんが、譲の言ってた友人かー。礼儀正しいイケメンだなぁ、こちらこそヨロシクな!」
羅々がニッコリ微笑みながら大将に挨拶する。
久しぶりに余所行きの声を聞いたよ、キモチワルイ。
そんな顔で羅々を見つめたら、無言の圧が羅々の指先にかかった。
だから、イタイデス。
「大将、これで荷物は全部か?」
「おお。それで全部だ。助かった、譲」
豪屋さんが大将の荷物を運んでいたようだ。
流石筋肉太郎。力仕事は君のものだ。
その後ろからひょっこり顔を覗かせた愛島さんに、私は無表情の顔を向けた。
「…で?YOUは何しにここへ?」
「某テレビ番組のタイトルみたいな聞き方で煽ってくるなー胡桃」
私と愛島さんとの会話を聞いた豪屋さんが、「愛島にはドライバーを頼んだ。」と意外なワードを呟いた。
「え?車の?」
「愛島は免許を持っているし、運転も慣れているからな。
イベント二日目は午前で終わらせて戻らないと、翌日に響くだろう」
「それに、樹々より先に戻らねーと、困るのはお前だろうが?」
「という事で、俺が呼ばれたってわけだ。」
なんと。これが羅々の言っていた根回しか。
ぶっちゃけ、そこまで考えていなかったので、大変助かるスケジュールです。
「宜しくお願いします。パイセン」と私は三人に深々と頭を下げた。
「帰りは送ってやれなくてすまねーなぁ。そのかわり、宿泊先は俺の弟の家を頼んであるから、旨い飯と寝床は任せてくれ。」
大将がそう言ってニッカリ笑う。
マジで神です。大将!
私たちは二台の車に分かれて乗り込み、大阪へと向けて出発したのだった。
◇◇◇
二台の車は一般道から高速道路に入り、見晴らしの良い景色の中を一定の速度で走っていく。愛島さんの車の助手席で、チラリと運転している愛島さんの顔を見つめると、楽し気に運転している顔がそこにあった。
「愛島さん免許持ってたんですね…。車も愛島さんのですか?」
「いや、車は親父のだが、運転は好きだし慣れてはいるな」
ナルホド…流石ホストの異名を持つだけある。
運転姿が板についているし、さぞ車でデートもしまくっているのだろう…。
まぁ、そんな事はどうでも良いんだが、これは使える。
次回、樹々兄の追っかけをする時は愛島さんを召喚しよう、そうしよう。
「お前今……俺を足認定しただろう?」
「え。ナンノハナシデスカ?」
心の声が漏れていたのだろうか、愛島さんから「却下だからな」と念を押された。
最初のコメントを投稿しよう!