幼馴染は双子

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カシカシと慣れた手付きで羅々の頭を洗髪している私…。 悪魔はご機嫌に湯船の中で鼻歌を歌っている。 (クッソ……毛根死滅する呪いでもかけてやろうか) 気がつけば、いつの間にやら この悪魔の背中や頭を洗う、侍女のようなポジションを与えられていた。 (解雇しろ!今すぐに!) 心の中で訴えるが言葉には出来ない。 何故なら……パワーバランスが違うからだ…。 「なぁ……お前いつまで樹々の事想い続ける気だ?」 「ん?一生傍にいる所存ですが?何か?」 「あいつが振り向かなかったらどうすんだ?お前、女としての旬も婚期も逃すぞ?」 「……」 ザーとシャンプーを洗い流していたシャワーを羅々の顔にかける 「ップア……この糞アマ!」 「うわ……」 大きな水しぶきを上げ、体が湯船にダイブする 私はブチ切れた羅々に湯船に引きずりこまれたのだった。 「……羅々は何でそうなの……」 湯船の中、ずぶ濡れのままポツリと呟く。 羅々はそんな私の頭に手を置き、ガシガシと掻き回した。 「悪いのはテメェだろ。そもそも言われて嫌なら言葉で反論しやがれ」 「語彙力が乏しいから無理……。」 「ああ、お前はバカだったな……忘れてたわ」 そう呟いてニッと嫌味な顔で笑う羅々の鼻を摘まんだ。 「双子なのに……何で恋愛対象が違うの?樹々兄だけ何で男の人なの?」 「そんな事言われてもなぁ」 「羅々の恋愛対象が女の人なら、樹々兄もいつか変わるかもしれない」 「だから頑張るってか?ババァになるぞ、お前。 悪いことは言わねぇ、樹々以外にも目線を向けてみろ。」 はーっと深いため息を吐き、羅々は湯船から立ち上がった。 「風呂の中で少しゆっくり考えろ。上がったら着替え置いておいてやるわ」 「ありがとう……」 羅々が浴室から出て行くのを見計らい 私は濡れた服を脱ぎ湯船に浸かりなおす。 「樹々兄以外に目線を向けろ……か」 それが出来れば苦労はしない……。 羅々は口は悪いし、歩く露出狂だけど、いつも言っていることは正しいと思う。 心配してくれているからこその、あの言葉なのだ。 何だかんだ言いながらも羅々は優しい。 ただ、言葉がストレートなだけに、心を抉ってくるのだ。 「胡桃ー。タオルと着替え置いておくわよー」 「うひゃわ……あ……りがとー樹々兄」 突然脱衣所から、樹々兄に呼びかけられ変な声が出た。 タオルはともかく、 下着まで好きな人に用意される複雑な乙女心よ。 最近は、それも麻痺してしまっている。 これはダメだろう。 (こんなんじゃ恋愛感情沸かないよね……。) 深いため息を一つ吐くと 私は身体を洗い、お風呂から上がった。 脱衣所には、着替え一式と 薔薇の香りのボディクリーム 「女子力……」 敗北感を感じつつ、手で伸ばし身体にクリームを塗る 薔薇の香りが広がり、私から樹々兄と同じ香りがした。 ◇◇◇ 居間に戻ると、ケーキと紅茶がテーブルにセットしてあった。 美味しそうなケーキに思わず目が釘付けになる 「ホラ、座って食べなさい。髪の毛乾かしてあげるから」 「はーい」 私は樹々兄の横に座りケーキの皿を手に取る イチゴが沢山入っていてテンションが一気に上がった。 「胡桃、イチゴショート好きでしょ?  美味しいって評判のお店だったから、買ってきたの。お味はどう?」 「最の高です!」 横には大好きな樹々兄が、私の髪の毛を乾かしてくれていて 手には大好物のイチゴのケーキ 「今日は私の命日かな……」 「何縁起でもない事いってるの」 樹々兄は苦笑いを浮かべクスクスと笑った。 「ねー……樹々兄、好きだよ。」 「あら嬉しい。あたしも胡桃を好きよ?フフフ」 いつも軽く流される私の告白 心なしかイチゴが少し酸っぱくなった気がした。 BU-BU-BU-BU- 傍にある携帯からバイブの音がする 樹々兄はそれを手に取ると通話ボタンを押した。 「ハーイ、どうしたの?譲ちゃん。デートのお誘いかしら?」 嬉しそうな樹々兄の声 電話の相手は、三年の豪屋譲。樹々兄の想い人である。 今、私の最大のライバルであるゴーヤ クッソー!いつかチャンプルにして食ってやんよ!
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