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愛島さんと一緒に、ケーキ無双をしていたら
結構良い時間が経っていたようだ。
そして、つい、うっかり……うっかり……
樹々兄達がお店を出た事に、全く気が付いていなかった。
不覚ー!
ケーキに夢中になっていた自分を呪いたい。
だが、ケーキに罪はない。大変美味しゅうございました。
空になったお皿に「ごちそうさまでした」と手を合わせていたら
愛島さんが、伝票を手に取った。
「―さて、豪屋達も先に店を出たし、俺達もそろそろ行くか?」
「あ、うん。そうですね。お会計…」
「ああ、先に会計しとくから、お前はトイレでも行って来い。出口で待ってる。」
「え?じゃ後で、ちゃんと請求して下さいね。」
「ああ、じゃ入り口でな。」
私は愛島さんと一旦別れ、化粧室へと足を向けた。
手を洗い、外へ出れば、数人の女の子達に声を掛けられた。
「ちょっと、あなた」
「はい?何か御用ですか?」
私は小首を傾げながら、言葉を返す。
突然ガシリと腕を掴まれ、
思わず「うわ!」と驚きの声を上げたが、女の子達は構わず
ホテルの裏側へと私を引っ張っていくのだった。
(え?もしや…私……ピーーーンチ?)
◇◇◇
会計を済ませ胡桃を待つが、待てど暮らせどアイツはやってこない……。
「食いすぎて、腹でも壊したか?」
そんな言葉を思わず漏らせば、不意に誰かに名前を呼ばれた。
「あの……愛島さんですか?」
「ハイ、そうですが?」
いつもの条件反射で、優し気な顔を全開に振り向けば
数人の見知らぬ女が、俺を見てパァッと顔を赤らめる。
その顔に「メンドクセェ…。」と心の中で、盛大に舌打ちをした。
「きゃぁ!やっぱり愛島さんだ!カッコイイ!」
「わわ、あの……写メ一緒に良いですか?」
「へぇ、僕の事知ってくれてるの?嬉しいね。」
営業スマイルでにっこり笑えば、目の前の女達から
鼻息荒い言葉が返ってきた。
「も…モチロンですよ!
愛島さんを知らない子なんて、この辺じゃいませんよ!」
「そうなんだ、ありがとう。
ところで、高校生の女の子、トイレ付近で見かけなかったかな?
食べ過ぎてお腹壊しちゃったかもしれなくて、心配しているんだ。」
「あ、愛島さんと一緒にいた子ですよね?……彼女ですか?」
目の前の女の顔が、怒ったように少し歪む。
俗にいう嫉妬というやつだ。
見ず知らずの奴に、何で嫉妬されなきゃならねーんだ?と舌打ちしつつも
表情は優しいままの笑顔をキープした。
「違うよ。妹みたいな子なんだ。」
その言葉に反応し、女達の顔が安堵の色を浮かべる。
その中の一人が「あ!」と声を上げ、ずいっと一歩前へと現れた。
「あ、私見た!
さっきトイレで何人かの女の人と、何処かに行くの見たよ!」
(何だと?連れてかれた?)
誰にだ?
「そうなんだ、ありがとう。心配だから探してみるよ。」
俺は女達に笑顔で手を振り
急ぎ足で建物の周辺を探すことにした。
チッ、面倒な事にならなきゃいいが……。
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