恋する衛星

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 夜の浜辺。  空には、きれいな月が浮かんでいた。  人のいない浜辺はその月の光に、波も砂浜も青白く染められていた。  そんな神秘的な世界に駆け込んでくる女と男があった。  逃げる女、追いかける男、であった。 「真由美~!」  男は女の名前を叫びながら、逃げる女を追いかけていた。  女の方は何も言わず、苦しそうに唇を噛み、涙を流しながら走って逃げていた。  やがて、砂浜に足を取られて思うように走れなくなった女に男が追いついた。  男は女の腕を掴んだ。  そうして二人は立ち止まった。 「真由美!」 「もう、離してよ! りっちゃん!」  真由美は律夫の手を振り払った。  そして、律夫に掴まれていた自分の腕を慰めるように胸に抱えると、律夫から顔をそむけた。 「だから、あれは誤解なんだって」 「うそ! 私……、だって、だって……、私、わかっているんだから!」  真由美は激しく顔を横に振った。 「だから誤解だって! ちゃんと、あの時のことを説明させてくれ。あれは、フリードリンクに気を良くした俺が、コーラとカルピスを……」 「もう、聞きたくない!」 「あ、待って!」 「いや!」  律夫は呼び止めたが、真由美は聞く耳を持っていなかった。  それを見て律夫は、 「よし、わかった。もう、わかった。俺、何もしゃべらない」  と、白旗を上げた。
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