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目の前に湯気がふわふわと立ち上るクリームシチュー。
かなり夜も更けてしまった中、俺はパジャマの上にモコモコのカーディガンを羽織って、ソファに座りそれを口に運んでいた。
「玲先輩、お昼食べ損なったって言ってたのに、ごめんなさい。お腹すきましたよね」
二葉が謝りながら用意したクリームシチューを、スプーンで掬う。
あー、あったまる。
あのあと疲労でくったりした俺を風呂に入れてくれて、髪も乾かしてもらった。至れり尽くせりとはこのこと、というほどしてもらって、俺は肌触りが抜群に気持ちいい、あったかカーディガンに包まれて、あったかクリームシチューを口に運んでいるからむしろ上機嫌なんだけど、それを言うのも恥ずかしい。
「ん……大丈夫……」
と短く頷いた。
シチューの温かさがじんわり広がって思わず笑顔になる。
「美味し……」
思わず呟くと、二葉も満面の笑みを浮かべた。
「急に寒くなりましたもんね。あ、今夜先輩の寝室に毛布出します?」
俺のお気に入りの柔らかな感触の毛布を出そうかという二葉の問いに、俺は静かに首を横に振った。
「いいんですか? 先輩寒がりなのに。明日の朝もきっと冷えますよ?」
「俺の部屋じゃなくて……なんつーか……その……なんだ……」
「はい?」
歯切れの悪い俺を覗き込む二葉。
「……俺の毛布はお前の寝室に出しといて……」
「え……っ、それってこれからは一緒に寝てくれるってこと? 寝室一緒にしてもいいってこと?」
二葉が身を乗り出す。ほんと犬みたい。
「……寒いから……お前あったかいし」
あんまり嬉しそうな声を出すから、何でもないふりしてシチューを掬って口に運ぼうとする。すると。
「うわっ溢れるっつーの!」
ソファの隣に座っていた二葉が飛び付くように抱きついてきた。
「明日はベッドの中でネトフリ一緒に見て、一日ゴロゴロしましょうね。 この週末は家にずっと籠れるように、美味しいものいっぱい買っておきました」
ココアに砂糖を100杯入れたくらい甘ったるい笑顔で言われて、胸焼けもせず、その甘さと温かさが嬉しいなんて、俺もホント大概にしなきゃなと思うけど、抱きついてきた二葉の背中を俺もぎゅっと抱きしめた。
だって今日は寒いんだから仕方ない。
end
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