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「心春ちゃん」
突然名前を呼ばれ振り返ると、心春の視界がピンクに染まり、優しい香りに包まれた。
「誕生日おめでとう」
の声と共に、風に乗って桜の花びらが紙吹雪のように心春に降ってきた。
――え?
心春が呆然と立ち尽くしていると、ランジェリーの彼が近付いてきた。
「心春ちゃん」
「え? 何で私の名前……。あーーっ!!」
彼が指先で摘まんでいるそれを見て、心春は声を上げた。
「探してただろ?」
「はい、めちゃくちゃ探してました」
「俺にくれたパンの袋に入ってたよ」
「あぁ、そうだったんだ」
「梅元心春」
彼がスタンプカードの裏面を読み上げた。
「あ、そういうことか」と心春は理解した。
「誕生日当日はスタンプ五倍押し……太っ腹なパン屋だな」と言って笑ってから彼が尋ねる。
「心春ちゃん、昨日誕生日だったんじゃない?」
「――当たりです」
「心春ちゃんって、スタンプカードにちゃんと名前書くタイプなんだね」
「あぁ……はい」
「俺そういう子、すげー好き」
【完】
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