精巧緻密な機械

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「昔の事は水に流しましょうってよく言いますよね。  だったら、過去って水溶性なんじゃないかと思うんです」 「その発想は天才的だねキミ!」  このやりとりからすべてがはじまった。  助手の発言に目を付けた博士、  助手と共に“過去を取り出して水に流す装置”を開発した。 「装置はシャワールームの形がいいね」と博士は工夫した。  そのようになった。  縦長のボックス状の設計になっており、中に入った人に上から  特殊な水を浴びせて使う。  こうして下に流れ落ちてくる嫌な過去を汲み取る仕組み。  汲み取った液状の過去は、恥ずかしい過去、  忘れたくとも忘れられない過去、  思い出したくないようなトラウマ、  本人にとって嫌な過去だけ。  嫌な過去から自由になれる。  しかも無料で回収してくれるとなればひとだかりになった。  軽トラックに装置を乗せて街を回る助手はどうにも合点がいかない。 「どうして無料なんですか?お金出して忘れたい人だっているだろうに。  無料だなんてサービスしすぎです」  博士はニヤニヤ笑っている。
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