精巧緻密な機械

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「他人の要らない過去を引き受けるなんて、私だって御免ですよ。  しかも回収した液体の過去、どうするんです?  海にでも流すんですか?」  博士は自信ありげに言った。 「助手くん、考えて見たまえ。要らない過去は要するに、  失敗の記憶だ。そうだろ?」  まあ、そうですねと助手。  そんな失敗こそ大事なんだと博士。 「失敗しないととできないものがある」 「なんですか、それは」 「人間が失敗しないと発生しないもの、と言い換えればわかるかな?」 「アッ!学び!」 「そうなんだよ。忘れたい過去にこそ学びがある。成長の種がある。  こうしていろんな人々の過去の失敗、アイディアの失敗例、  すなわち学びをあつめて私に注入して成長を促す。その一方で、  他人には過去からはなにも学ばせない。そうすると?」 「私たちだけ賢くなれる!」 「そのとおり。どうだねすばらしい戦略だろう。  そして学びを繰り返せば、ある事象を生み出すこともできるんだ」 「ある事象?」 「それは失敗がつきもの。逆に言い換えると、  失敗が一定量溜まらないと  生まれないもの。それはなんだと思う?ヒントは“は――”」  助手はポンと手を打った。 「アッ、発明!」 「そうなんだよ!我々は人々の失敗を集めて、  人間に近いロボットを発明するのだ!  そしたら今度は過去の過ちの水を濾過して動力源にする。  濾過して何を取り出すと思う?」
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