第6章 ムラサキ(3)

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第6章 ムラサキ(3)

**************  あの時紫のことを助けられたと思ったのに……。  トリカブトの事件が解決して自分の部屋に戻った私がスマホを眺めているとtwit〇erの通知で『これ私たちの大学の事件じゃね?なんか結構やばくね?』というツイートが周ってきた。そこにはリンクと偶然撮影されたらしき動画が貼られており、紫と佐原が写っていた。二人は何事か言い争っていたが、そのうち佐原が紫を殴った。紫は倒れて動かなくなった。石に頭をぶつけたのか血が流れてきていた。佐原はすぐ逃げようとしたが、近くに人がいたらしく、「大丈夫か!?」とか「何やってんだ!?」とかの声が流れてきた。動画はそこで終わっていた。  普通こういうものは顔を隠す加工をしてから投稿するべきものだろう。実際、そのツイートのコメント欄には『顔隠せよww』『これ削除した方がよくね?個人情報じゃん』というコメントがあった。おそらくすぐに消されるだろうが、今の私には好都合だった。  一方リンクの方をタップすると小さな地方のデジタル新聞のサイトに移った。それによると男が道端で交際相手の女性を殴り、怪我をさせたというものだった。その男は交際相手に暴力をふるっていて、警察で詳しい話を聞かれているとのことだった。間違いなく佐原と紫だろう。だが交際中とはどういうことだ?別れたはずだろう?佐原がそう証言したのか?  すぐに紫のスマホに電話したところ、紫の父親と名乗る人が電話に出た。私が紫の友達だと説明すると紫の友達だということは知っており、入院している病院を教えてくれた。そこはなんと今日行ったばかりの病院で、私も驚いた。もしかしたら今日どこかで会えていたかもしれない。  さすがに今日はもう遅いので明日見舞いに行くということなり、トリカブトの事件が解決した翌日に私はまた同じ病院に来たというわけだ。 「あの、これどうぞ」 「まぁまぁ、ありがとうね、花崎さん」  私が持ってきた花束を差し出すと紫のお母さんが受け取って窓際の花瓶に飾った。 「紫の具合はどうなんですか?」 「あぁ、だいぶよくなったらしい。今日になって意識も目覚めて、経過は順調だそうだ」  私の問いに今度は紫のお父さんが答える。その答えに私はひとまず胸をなでおろした。
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