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「はぁ~~。紫…元気になるといいなぁ…。っていうかこれからどうなるんだろ。このまま紫とお別れになるんかなぁ……嫌だなぁ……」
私は再びカウンターテーブルに突っ伏して自問自答した。
「私と友達じゃなくてもいいけど、あなたを尊敬している人がいるのを忘れないでね……か。いい言葉ですね」
「やめてくださいよ。恥ずかしい」
あの時はちょっと気分が高ぶってそんなことを言ってしまった。緑川の真似をしたせいだが。
「それにしても随分思い切りましたね。花崎さんなら『私は紫のことが大好きだから友達でいよう!』とか言うと思ったんですが…」
「物真似似てないですね」
「余計なお世話です。真似したつもりもないですから。で?なぜ友達でいよう、と言わなかったんですか?離れるの嫌だったんでしょう?」
私の気のないツッコみに緑川は少し早口でむきになってそう返した。…かわいい。
私があの時誰の真似したかわかってないのかな?この人。…わかってないんだろうなぁ、きっと。色々な意味を込めて緑川を見たが、彼は、ん?という感じで首をかしげるだけだった。
「いや、私の存在が紫にとって苦痛なら寂しいですけど離れますよ……寂しいですけど…それだけですよ」
とりあえず私はそう答えた。
「…………」
それに対して緑川は無言だった。じっと私の方を見ている。あの観察する冷たい視線だ。
「あ、あの…なんか私の言い方まずかったですかね?」
沈黙に耐え切れず、私がそう言うと、緑川は
「あ、いえ、違います。何でもないです」
と返した。だったらなんだというのか。
「私もどういう答え方がよかったのかなんてわかりませんよ。人は他人の気持ちを完全に理解できるものではないのですから。結果なんて誰にもわからない。だったら少しでも自分のやりたいようにやれば良いと思います。花崎さんは花崎さんの思う通りに行動すればいいんですよ、きっと」
緑川はそう言って店の奥に引っ込んだ。
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