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第6章 ムラサキ(6)
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「紫、今度こそ大丈夫…ですよね?」
紫は反物を手に、店を出て行った。私も一緒に行こうかと言ったが、両親に車で送ってもらったからと言われたのでこの店に残った。
「どうですかねぇ……。趣味に打ち込んで元気になってくれるといいですねぇ」
私の言葉に緑川はそう答えた。そういう意図もあったのか。私は少し感心してしまった。
それはそうと……。
「っていうか最後のセリフくさすぎません?なんなんですか?あれ。鳥肌立っちゃいましたよ」
「すごすぎてですか?」
「んなわけないでしょ」
真面目にそう聞いてきた緑川を一刀両断する(フリだったのかもしれなかったが)。
「いや、あれはちょっと…テンション上がっちゃって、つい…。『紫草の~』の歌に少し掛けてみたかったというかなんというか……」
「ムラサキのあなたが咲く場所に………」
「ちょっ!!待っ……!!あーもう…何でやっちまうかなぁ俺……」
私がからかうと緑川は頭を抱えた。素の部分が出ている。…かわいい。
やっぱりこの人、中二病入っているなぁ。もだえる緑川を見て私はそう思った。蓮乃愛ちゃんの名前の件しかり、さっきの言葉しかり。そして中二病を発動すると後で人はこのようにもだえる。人はこれを黒歴史という。私にはなぜこうポンポン黒歴史を創造するかよくわからない。
時計を見るともう六時半だった。そろそろ私も帰ろう。すっかり冷えたカフェラテをグイッと飲み干す。
「ごちそうさまでした。店長。じゃあ私はこれで。あ、あとシフトにも書きましたけど金曜日から私休むので」
「はい。わかりました。気を付けて帰ってください」
そう言って私は店の入り口のドアに手をかける。そこで私は言いたいことがあったことを思い出した。私はドアの所で振り返った。
「あの…店長」
「はい?なんです?」
「さっき私と紫のことを褒めてくれましたけど…私も店長のこと…すごい人だと思ってますから」
目をパチパチさせる緑川を尻目に私は「じゃあ」と言って店を出た。また顔が赤くなっているのがわかる。悟られたくなくて逃げてしまった。外に出た私の耳にドアベルの音が届いてきたが、いつもよりその音が少しだけ大きく聞こえた、気がした。
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