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第7章 ヒガンバナ(2)
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そして行事が終わった翌日の日曜日。私は両親とともにカフェFleurを訪れていた。今まで忙しくてなかなか挨拶に行けなかったが、娘が世話になっているということで一度会ってみたいと言ったからだ。娘がバイト先でどんな様子かも見たかった、という理由もあったようだ。
緑川には私が来ることを言ってない。客としていくわけだし、問題ないだろう。
そう思いながら私は店のドアを開けた。
カランカラン。
店内にはお客さんはいなかった。ここ最近はお客さんが少ない気がする。最も店長の緑川はあまり気にしていないようだったが。
「いらっしゃいませ……あ、花崎さん」
奥から緑川が出てきた。
「こんにちは、店長。今日は来ないつもりでしたけど来ちゃいました」
「そうですか。そちらの方々は…?」
「あぁ、私の両親です。父の昇平と母の凛子です。お父さん、お母さん、こちらこのカフェの店長の緑川樹さん」
こういう紹介、一度やってみたかったんだよね。私が変な欲求を満たしていることには気づかないまま、三人はお互いにどうもどうも、とか、お世話になっております、とか無難な挨拶を交わしていた。
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