第7章 ヒガンバナ(2)

3/4
前へ
/177ページ
次へ
「…お父さんたち、歓迎されてないのかな」  ひそひそ声でお父さんが私に言った。 「確かに…悪いことしちゃったかしら」  お母さんもひそひそ声で会話に参加してきた。 「そんなことないよ。知らない人と話すのが苦手なんだって」 「…よくそれでカフェを経営できるわね」  それはまったくもってその通り。私も謎である。 「まぁちょっと変わった人だけど優しい人だよ。多分お父さんたちのことも悪く思ってないし、迷惑と思ってないよ、多分」 「ふぅん…それよりあんた!すごいイケメンじゃないあの人!」  お母さんが話題を変えて私に食いついてきた。 「しっかり捕まえときなさいよ、あんた!こんなチャンスめったにないんだから!」 「か、母さん!?そんなこと香織に言ってやるなって。香織の自由にさせよう」 「でもお父さん……」  …娘そっちのけで勝手に話進めないでほしい。 「あの人結婚してるの?付き合ってる人とかいるの?」 「え?結婚はしてないと思うけど…付き合ってる人がいるかどうかは……」  そう言われて気になった。実際どうなのだろう?あまり自分のこと話さない人だからなぁ。私が聞いたら答えてくれるのかな?でも聞きづらい…。 「ま、まぁそのうち聞いてみるよ」  とりあえずこの場はそれでごまかす。 「ここのバイトはどうなんだい?楽しいといつも言っているが、忙しすぎるとかないか?あの人から何かひどいことされてるとかないか?」 「お父さん!?」 「ね、ね、ほんとに知らないの?緑川さんの女性関係」 「お母さん!?」  それからコーヒーが届くまで私はツッコみどころありまくりの両親の質問責めにあった。今更だが、このひそひそ話聞こえてないよな?!
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加