第7章 ヒガンバナ(3)

1/5
前へ
/177ページ
次へ

第7章 ヒガンバナ(3)

**************  四十九日のため、私は週末に実家に帰っていた。金曜日に駅までお父さんに迎えに来てもらって土曜日の四十九日のための準備をしていたのだ。四十九日は家で行うことになった。そんなに大規模なものにするわけでもないし、良介は墓ではなく、仏壇に安置することになったのでそれも兼ねて自宅でやった方がいいということになったのだ。お弁当の手配やお坊さんとの打ち合わせなど結構大変だった。  最も私は直前の準備だけでほとんどお父さんとお母さんが事前準備をしてくれていたが。  金曜日の夕食の時に私はお父さんとお母さんにこの一週間であったことを話した。この一週間はトリカブトの事件に巻き込まれたし、紫の入院や盛大な仲直りがあったりで目まぐるしかった。二人ともかなり驚いていた。特にトリカブトの事件の方はこっちでも大きなニュースになっていて「なんでそれ言わなかったの」って呆れられてしまった。…まぁ確かに連絡しなかった私も悪いとは思うが、忙しすぎたのだ。しょうがない。 「っていうか四十九日の間って旅行に行くべきじゃないのよ?」  お母さんの言葉に私は驚いてしまった。知らなかった…。それは私が悪い。まぁ旅行といっても市内だったし、オフ会だったので良介も許してくれる…かな?  そんなわけで土曜日の四十九日の日。早起きして散歩した私は帰宅すると、シャワーを浴びて準備の続きをした。二人にまかせっきりで申し訳ないのでこれくらいは率先してやらないと、と思ったのだ。  そして十時になって招待客が全員来て四十九日法要が始まった。お坊さんが読経して焼香、それから長い法話を経て、良介は仏壇に安置された。私は葬式や法要をよく知らない。一応金曜日の打ち合わせでどんなことをやるかというのは把握していたが、どういう意味があるのかまでは理解できなかった。話が難しいというのもあるが、お坊さんの話というのが大学の講義を思い出して、自動的に聞き流しモードに入ってしまうのだ…。申し訳ない…。  そして招待客同士で会食もした。招待客と言っても親戚だけなので知らない顔はなかった。  一か月半前なら私は泣いていたんだろうなぁ。  味噌汁を飲みながら、私はぼんやりそんなことを思った。今でもたまに悪夢にうなされる。多分今日の朝、見た夢もそれ関連なのだろう。今だって罪の意識がチクチク心を刺してくる。そのたびに死にたくなる。心なしかみんなも私に話しかける時どことなくぎこちなかった。  それでも。私は今日は泣かない、と決めたのだ。大好きなみんなを悲しませたくない。良介を死なせてしまった私でも大事に思ってくれている人たちがいる。もう大丈夫だよって。そう思わせたい。親戚のみんなにも。お父さんやお母さんにも。良介にも。緑川や日下にも。紫にも。だから今日は泣かないと決めたのだ。  私の決意はその日一日なんとかもったのだった。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加