第8章 ススキ・ヨモギ(2)

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「おぉ…」  私は何とも言えない声を漏らしてしまった。感動から出たものか、驚きから出たものか自分でもよくわからない。  今私たちはカフェFleurの二階に来ている。三色団子を作り始めてからものの二~三十分で団子ができた。三色団子は串に刺して皿に盛り付けてラップをかけている。そのほかのプレーンとヨモギの団子はまとめてボウルにいれてある。あとトッピングとしてきな粉も用意してある。さらにさっき立木が車から取ってきた酒やつまみ、お菓子などがある。  …すごい量になってしまったな。これ全部食べ切れるのだろうか?  そして緑川の案内で料理をもってここに来たという流れだ。  私は今までFleurの二階には上がったことがなかった。緑川の居住スペースになっていたからだ。この店に来るようになってから二か月くらいになって初めて見る。といってもほとんどドアが閉まっていてどの部屋がどうなのかよくわからなかったが。    そして。    ガシャンガシャン。    廊下の天井から収納式の階段が降りてきた。 「へーすごぉい」  蓮乃愛ちゃんがキラキラした目でその光景を見ていた。 「これで屋根裏部屋に行きます。その屋根裏部屋の窓からウッドデッキに出ることができるんですよ。ちょっと不便ですけど、スペースの問題上仕方ないんですよ」  なるほど。 「鈴坂さんはこういうの好きなんですか?」 「うちマンションだから屋根裏とかこういうのなくて…面白いです」  いつもはおとなしい蓮乃愛ちゃんがこんな風になるなんて珍しい。私の家は屋根裏部屋があったけど確かに子供のころとかよく遊んでたから気持ちはわかる。 「じゃあ重いものは男が運びましょうか。ボウル持ちますよ?」  緑川がボウルを持っている私にそう言った。重いものは団子が入ったボウル二つと酒の袋二つだろうか(どんだけ飲む気なんだ…)。日下や立木はともかく緑川の方は軟弱そうだ。男とか女とか関係なしに大丈夫なのか心配だ。 「大丈夫ですよ、このくらい」 「…そうですか。ではお任せします」  私がそう言うと緑川は引き下がった。  立木が登っていくのを見てやっぱり彼にボウル任せればよかったかな、と思ったが、一度引き受けた手前、言いづらい…。
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