第8章 ススキ・ヨモギ(3)

1/2
前へ
/177ページ
次へ

第8章 ススキ・ヨモギ(3)

**************  なんとか料理を屋根裏に運び込んだ私たちは一息ついて辺りを見渡した。そこはよくある屋根裏部屋で、全体的に結構雑然としていて物置として使われているのがわかる。隅の方に段ボールが積まれていたり、シーツがかけられていたりしていた。突き当りに結構大きな窓があり、段差もついていた。部屋の中心の辺りはよく入るか、最近掃除したかのどちらかなのだろう、他の場所よりほこりが少なかった。 「へぇ…こんなところがあったんですね…」 「えぇ。物置状態になってます。色々なものが置いてあります。この間紫さんに渡したムラサキの反物もここにあったんですよ」 「へぇ…」 「で、ウッドデッキはどこにあるんですか?」  紫が緑川にそう聞いた。 「あぁ、そこの窓が入口になっています。少し狭いですけどね」  正面に屋根裏部屋にしてはやや大きな窓が、しかし出入りするには小さい窓があった。月明りが差し込んでいる。  私はその窓に近づいて外を見た。 「へーすご!結構立派じゃないですか」  私は思わず声を上げてしまった。窓の外には満月に照らされた広めのウッドデッキが広がっていた。屋根の途中に増設されたという感じだ。広さは四畳半くらいで周りに低めの柵がついていた。屋根がないので雨とかは大変だろうけど、逆に今日のような月見にはちょうどいいと言える。目の前には裏庭が広がっていた。なるほど、このウッドデッキは方向的にカフェの裏側にあったから今まで見えなかったのか。ようやく謎が解けた。 「確かに!雰囲気いいですね」 「わぁ!すっご!」 「それはよかった」  私の後ろからのぞいた二人も似たような感想だった。その奥を見ると緑川が心なしかちょっとうれしそうにしていた。  外に出ると月明りで思ったより暗くはなかった。スペースも六人が十分に座れるスペースがある。庭からは虫の鳴き声がかすかに聞こえてくる。 「ほらほら、どいたどいた、酒が通るぞっと」  ガシャガシャ袋を鳴らしながら立木がウッドデッキに出てきた。めちゃくちゃ笑顔だ。どんだけ楽しみなんだ。 「立木さんこそどいてください。団子運びますから」  そう言って今度は日下が入ってきた。ボウルや皿を持っている。 「そういえば取り皿とか箸とかなかったな」 「あ、じゃあ私取ってきますよ」  緑川のつぶやきに私が応じた。 「場所わかりますか?」 「はい。大丈夫です。皿は紙皿でいいですよね?」 「はい。それでお願いします。あと階段気を付けてくださいね」 「はーい」 「あ、コップとかも必要ですね。私も一緒に行きます」  紫がそう言ったので二人で取りに行くことになった。 「鈴坂さんはこちらの方を手伝ってください」 「わかりました」 「一応お嬢ちゃん用にジュースとかも用意したが、足りなくなったら店のを使っていいか?」 「構いませんよ」 「じゃ、蓮乃愛ちゃん、団子盛り付けるの手伝ってくれる?」 「はーい」
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加