72人が本棚に入れています
本棚に追加
第8章 ススキ・ヨモギ(4)
**************
「おいしいですね、お団子」
蓮乃愛ちゃんの感想に私も同意見だった。団子はもちもちしていてほのかな甘さがあった。のどに詰まりそうなのが難点だが。
「きな粉に砂糖いれたのか。なるほどな」
「俺は甘い方が好きだからな」
日下と緑川がそんな会話をしていた。
「ぷはぁ~。うめぇ!」
立木はビールの缶を片手にそう叫んだ。早っ。
「三色団子もおいしい~。ピンクのやつに砂糖いれてみたけどそれぞれ味が違っていいね!」
紫は三色団子を食べていた。提案した甲斐があったというものだ。まぁ砂糖を入れようといったのは紫だが。
私も三色団子を食べてみる。一番上のピンク色の団子は明確に甘い。その次の白色の団子はさっき食べた通りのおいしさ。そして一番下の緑色の部分はさっき嗅いだヨモギの匂いがほのかにした。確かにそれぞれ味が違っていて、しかしバラバラではなく、なんとなくまとまった感じがする。ピンク色の団子は大体紫が指揮していた。私の思い付きなのによくこんなにおいしくなったな。やっぱ料理する人は違うわ。私は紫に対して少しだけそんな風に思ってしまった。
**************
「山本紫さん、だったか。この間は大変だったな。警察として面目ない」
立木が紫にそう話しかけてきた。
「いえ、そんな…。私の方こそすみません。もっと早くに相談していればあんな大事にならなかったのに…」
「まぁとはいってもストーカーとかDVとかは生安、生活安全課の担当だから俺が担当することはなかったと思うけどな」
そう言って立木がビールをあおった。
「とにかく後遺症とか痕が残らなくてよかった。これからは困ったことがあったらいつでも警察に連絡してくれ。色々力が及ばないこともたくさんあるが、それでも君たち市民を守るのが役目なんだからよ」
柄にもなく立木はそう言ってまたビールをあおった。まぁやっぱいい人なんだろうな、適当だけど。
「そういえば紫、大丈夫?その、男の人と一緒で……」
私がそう聞くと紫はほんのり笑った。
「あ、うん。大丈夫。みんな優しいってわかってるし。男の人がみんな亮く…佐原みたいな人ばっかじゃないってわかってるから」
「言うね~紫ぃ~」
「えへへ…」
私はなんだか嬉しくなって紫の肩を抱き寄せた。ちょっと紫の顔が赤くなっている。少し酔いが回ったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!