第8章 ススキ・ヨモギ(4)

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************** 「そういえば石川里美さんの取り調べは順調なんですか?」  日下が立木にそう聞いた。 「あぁ、観念したのかイカレてんのか、気楽そうに素直に答えてるよ。精神科の先生も交えてやってるよ」 「何の話?」  蓮乃愛ちゃんがそう聞いてきた。 「あぁ、それはね、俺たちこないだ………」  日下が蓮乃愛ちゃんや紫に説明してくれるようだ。私と緑川は立木に向き直る。 「健吾さんや岸部さんは?後遺症とかは…?」 「あぁ、この間退院したそうだ。後遺症とかもないってよ」 「そっか…よかったですね」 「そうですね。まぁトリカブトは地域によって毒性がまちまちですからね。ニリンソウも混ざっていたのに加えてあの地域のトリカブトの毒性が弱かったのかもしれませんね」 「へ~そうだったんですかぁ」   そう言って私は団子を串で刺して口に入れた。ちなみにこの串は三色団子の串だ。箸で団子を食べるのも変だし、ちょうどよかった。  っていうかこんな食事中に毒殺未遂事件のことを話すのはどうなんだ?私は今更ながらにそう思った。あれから食べる時にあの日のことが少し思い出される。あんなことめったに起こらないだろうけど…。まぁ結局私は被害出なかったからそこまででもない。実際に被害にあった人たちはどうなんだろうか。体だけじゃなく、心も大丈夫なのだろうか…。 「君たちも捜査に協力してくれてありがとな」  そんなことを考えていると立木が私に向かってそう言った。 「いえ、そんな…容疑者扱いされたのはアレですけど」  私は少し皮肉を混ぜてそう返した。 「そこは申し訳ないと思ってるが、やめる気はなかったぞ。人を疑うのが刑事だよ」 「とかなんとか言って。途中から完全に協力者という形になりましたよね?信用できると思ったんでしょ?素直じゃないんですから」 「…うっせえよ、クソガキ」  緑川のまぜっかえしに小さくつぶやいて立木はグイっと日本酒が入った盃を傾けた。 ************** 「ねぇ、お酒っておいしいの?」  蓮乃愛ちゃんのそばで紫と飲んでいた私はその質問にあごに手を当てて考え込んだ。だいぶ酔いが回ってきたせいで思考が鈍い。 「まぁ人それぞれかなぁ。私はビール苦手だし」 「そうなの?」 「ビールって苦いんだよねぇ。日本酒とかは結構いけるわ、私」 「私はビールもおいしいって思うけどね。それに味を楽しむというより酔いを楽しむって人も多いから。お酒飲めないって人もいるしね」 「でもすごい楽しそう…いいなぁ」  紫の言葉に蓮乃愛ちゃんはそう恨めし気に言った。酒の席に子供を誘ったのはまずかったかな、と一瞬思ったが、みんなで飲み食いできる方がいいよね、と思い直した。 「私も飲んでみたいなぁ…」  …さすがにそれは容認できない。未成年の大学生ならまだしも小学生に酒は早すぎる。 「おいおい、それはいかんぞぉ」  そこに大分顔が赤くなった立木が来た。結構できあがっている。 「ま、大人になったらだな。楽しみにしてな!人生楽しくなるぞ!!はっはっは!!」  そう言って立木は豪快に笑った。…個人差あると思うんだけど…。
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