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「なんだろう? お金でも借りてたかな?」
正直言うとお金を借りたことが有ったから僕は言う。それはとても昔の事で高校時代に遡る。冬の学校からの帰り道。どちらの用事か忘れたけれど、日が落ちて暗くなった頃だった。
「あたし達もこれまでなのかな?」
進学と就職を控えて僕たちのもとへも誰にでもある別れが訪れそうになっていた。
「そんな事を望んでるの?」
「ううん。そうじゃないけど、良くある話だから」
まあ、当然そんなのは見渡せばその辺に転がっている。
「ならないよ。俺たちなら」
「言い切れないでしょ。君が他に好きな人ができるかもしれないのに」
夜道を歩いている彼女の背中を見ていた。気が付いて振り返る彼女が居る。
「悪い。お金貸して。五百円で良いよ」
「どんなタイミングで借りてるの? 雰囲気壊さないでよ」
そう言いながらも彼女は直ぐに僕に近づいて財布を取り出していた。
「借金をしてたら君に服従するしかないからと思って。これは俺たちを繋げる契約金だと思って」
僕が思いついた素敵な思いつき。でも、彼女はクスクスと笑い始めた。
「うん。面白い。けど、今のでそんな事にはならない気がした!」
彼女はそれから笑って財布をしまったから、実際貸してもらってない様な気がする。それからも僕は借金をした記憶なんてない。それは一応僕のプライドでもある。
「お金にルーズな人じゃあないでしょ。それにこんなロマンチックな時にそんな事を言わないよ」
これも違ったのでまた考える。
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