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「昔借りたCDは返したよね?」
高校から中学に記憶は移る。それは僕たちの恋愛の始まり。
「どうもお久しぶり!」
どうしてか同じソフトテニス部だけど中学校も違い男女だから試合もないけど、僕たちは試合会場で会うたびに顔を合わせていたので仲良くなっていた。
「また予選負けだよ。落ち込んでるんだから声を掛けんな」
まだこれからよりもずっと仲が深まっている訳ではない。普通に友達くらいだった。
「君は集中力が足りないんだよ。会場に着いてからもソワソワしてるし」
「そんなに俺の事を見てたのかよ」
「うん。あらゆる意味で気になる存在だからね」
ドキッとする言い方を彼女はすんなりとしていた。これは彼女には勝てないと思い知らされた瞬間でもある。
「もっと落ち着かないと。試合前のルーティンとかないの?」
「別にそんなの。そっちはどうなんだ」
思えばこの時の会話からもっと彼女と仲良くなった気がする。
「私は好きなバンドの楽曲聞いてる。そうだ! CD貸してあげるから聞いてみなよ。必ず気に入るから」
そして彼女もなんだかその頃から良く僕に話すようになっていた。中学自体が近いのでたまり場的にはそんなに違いはない。
「このアルバムはお勧めだから聞いてね。何なら感想文もお待ちしますよ」
翌日の練習終わりには僕たちは待ち合わせをして、部活とは関係なく彼女との付き合いが始まった。もちろん恋が始まるのなんて簡単だった。恋人になるのは数えるほどの月日しか要らない。
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