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当然部活で彼女を見付けた時には驚いたけど、苦い思い出があるから知らないふりを現在まで続けていた。
「懐かしい思い出だねー。うん。あれから算数は頑張ったんだ」
「約束ってその時の事?」
思い当たる約束なんてそのくらいだった。
「別にあの時に約束したつもりもないし、そもそも聞くのはシャクだったから聞かないつもりになってた。だから約束は不成立だよ」
わからない。本当に彼女に言わなかった彼女との思い出まで遡ったのに答えに辿り着かない。
「こっちは負けたの認めるから明かさないか?」
完全に僕のほうはもう思いつかないから彼女に答えを聞こうと思っていた。
「本当に忘れてるんだ」
それなのに彼女は頬を膨らませている。そんなの愛らしいだけ。
「忘れたつもりは無いんだけど」
「ずーっと前だよ。多分記憶にないんでしょ。そんな人だもんね」
喧嘩を売っている様な彼女の話し方だが、僕はこんなことくらいで怒らない。彼女もそれを知っているのでわざとだろう。
「しょうがないか、私たちが公式で出会う前の事だからね」
「出会う前? それなのに約束したの?」
「そうだよ。あの時もこんな夜空が広がってた」
思い出すほどの記憶なんて無かった。彼女との出会いは小学校の塾だと今でも思っているから。
「塾じゃなくて?」
高いところを眺めている彼女に対して、僕は頭を抱えていた。折角なら答えたい。そして約束と言うのならそれを守りたい。
「小さいころに子供キャンプに参加したことはない?」
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