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言われると記憶は有った。小学校の低学年の時に夏休みの企画でそんなのに参加をしていた。
「お母さんと一緒じゃないとヤダ!」
まだひどい甘えん坊は僕がそんな事を伝えても親はそれをどうにかしたいと思ったらしく、キャンプに半ば強制的に参加させたのだった。
校区どころか県単位で募集をしていたので友達なんかも居なかった。それなのにみんなは楽しそうに遊んでいる。その隅っこで僕は座っていた。
「君も一緒に遊ぼうよ」
その時に声をかけられた。歳が同じくらいの女の子。でも、拗ねていたので「僕は良い」なんてそっぽを向いた。
「折角なんだから楽しまないと、寂しくなっちゃうよ」
その女の子は僕の思いなんて考えないで手を引いた。その手はちょっと震えていて「本当は私も怖いんだ」と笑っていた。
それから他の子供達も寂しいのを紛らわせる様に遊んでいるのだと思って、僕も楽しさで寂しさを消した。もちろんその女の子と特に仲良くなって。
「月が奇麗だね」
花火をみんなで楽しんでいるときにその女の子がふと言う。夜の空を見るとそこには真ん丸のお月様が輝いていた。
「うん。そうだね。でも寂しそう」
「ちょっとね。なんか段々と怖くなって」
女の子のことを見ると不安な顔をしている様な雰囲気。けれど、それは僕の言葉で消せた。
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