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世間からすこし距離を取った生活を送る中で、ある年の冬、両親が肺の病で亡くなった。
両親に仕えていた使用人の手を借りて葬儀をなんとか行う。悲しくて、どうしてこんな私を大切に愛してくれた両親を一度に失わなくてはいけないのだろうと、ベールの下で泣いた。
涙に暮れる日々を送っていたけれども、そんな私を助けてくれる人などいなかった。
領地の管理も私がやるのでは上手くいかず、みるみるうちに収入が減って財産が無くなっていった。
使用人への給金は支払っていたけれども、財産が無くなっていくにもかかわらず、両親の残した家財道具や装飾品を売ろうとしない私を見て呆れたのか、将来の不安を感じたのか、辞めていく使用人も後を絶たなかった。
庭師もこの館から去ってしまい、庭の手入れをするものが誰もいなくなった。
女中に庭の世話をさせるのは重労働だからさせたくない。けれども、よそから庭師を呼ぶほどの余裕もない。
両親の残した古いものに囲まれて、流行遅れのドレスを着る私が住むこの館は、すっかりよもぎが生い茂ってしまった。
周りの人がどんなふうに私のことを噂しているかなんてわからない。でも、そんな噂は耳に入らない方がいいのだろう。
私はこのよもぎが生い茂った館の中で、ただ両親のことを偲んでいればいいのだ。
けれども、時々社交界のことを思い出す。
私がもっとうつくしかったなら、両親はもっとよろこんでくれただろうか。もっとしあわせになれただろうか。亡くなる直前までに、もっと安心できただろうか。
今私が置かれている不幸の原因は、すべて私が醜いからではないかと思った。
いっそのこと、このまま死ぬまで喪に服して、一生ベールを被っていた方がいいのではないか。そんなことを考えて日々を過ごした。
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