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そんなある日のこと、この館に残っている数少ない使用人、私の乳母と私の世話役が、噂話をしているのを聞いた。
なんでも、近頃このあたりで黒ミサというものが行われているというのだ。
黒ミサといえば、神様ではなく悪魔を崇める儀式で、悪魔を呼ぶこともあると聞いたことがある。
私ははっとした。
神様が助けてくれないのなら、悪魔に縋ればいいじゃない。
私は乳母を呼び出して、黒ミサの噂のことを訊いた。乳母はいかにもおそろしいことだと言わんばかりに話したけれども、私はその乳母にこう言った。
「ねえ、私からのお願いなのだけれども、黒ミサに行くにはどうしたらいいか教えてちょうだい」
あの後、乳母はおそれからか、私が黒ミサに行くという悲しみからか、泣きながら黒ミサへの行き方を教えてくれた。
乳母は何度も何度も、私に黒ミサになど近寄ってはいけないと言ったけれども、黒ミサが行われるという日の夜、私は乳母にこう言って館を出た。
「ミサに行くのと何も変わらないですよ」
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