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それからというもの、私は近隣の村から少女を買い、その血を浴びた。その度に肌は白く滑らかになり、あれほど私を悩ませていた鼻の先の赤味も消え、高すぎて嫌だった鼻はむしろ美点になった。
私の行いを残った使用人達は恐れた。口外しない使用人はそのまま使ったけれども、逃げ出したり口外しようとした使用人は殺してその血を浴び、肉を食べた。
そうしてたくさんの血を浴びた私は、社交界で馬鹿にされていたのが信じられないほどに見違えた。
自分のうつくしさに自信を付け、私はまた社交界へ行くことにした。
着ているドレスは流行遅れだけれども、その古めかしいドレスはかえって私のうつくしさを際立たせている。
社交界に行くと、男も女もみんなが溜息をついた。あのうつくしい令嬢は誰だろうと噂する声が聞こえる。
しばらくの間みんなが私を遠巻きにしていたけれども、その中からかつて私を罵った男がやってきて、声を掛けてきた。
「ごきげんよう、うつくしいご令嬢。
あなたはどこの家の方ですか?」
その言葉に、私は扇子を口元に持っていってこう返す。
「『サフラワー』といえばわかるかしら?」
みんなが一斉にざわめく。
私は目の前の男にこう訊ねる。
「あなたは、私の本当の名前はご存じ?」
男は私の手を取って、震える声でこう返す。
「もちろんです、オディール。
黒鳥のようにうつくしい……」
この日この時から、私のあだ名は『サフラワー』ではなく『黒鳥』へと変わった。
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