14人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう。」
これしかでなかった。
その後、赤ちゃんを産んだが絵里は触れられずにいた。
それを見て篤人が「光都」という名前にしていいかときき、俺と育てようと言った。
高校生だから、働く手段はアルバイトしかないけど。とつぶやく篤人に、泣きながらありがとうと彼女は言ったらしい。
でも、籍はいれないで。と言われた。
だから、シングルマザーとして子育てをして
補助を受けながら生活していたようだった。
「それで、俺に金をもらいに来たんだな。」
これで真実がわかった。
「なぁ。篤人。俺のこと好きじゃなくていいからさ
最後に一回だけ、一回だけキスをしてくれる?」
あのたった一度だけ交わしたキス。
あのたった一度だけ抱かれたときの彼の唇や手の優しさを今でも鮮明に思い出せる。
「あぁ。」
これが最後。もう二度と叶わない願い。
彼は俺の名前を、聡太とつぶやいてキスをした。
「んっっ!っっはぁっ、、」
舌をちょっと入れてくれた大人なキスだった。
あの時に似たキス。
涙はとまらないけれど、俺は今喜びに溢れていた。
そして同時に悲しみも溢れていた。
「ごめんな。聡太。最初は好きだったんだ。だけど、、。」
俺は笑った。
「いい加減にしてよ、篤人。俺をどれだけ惨めにさせたいの?俺はさっき言っただろ?俺がお前を捨てたんだよ。」
そう言うと篤人は、あぁ。と言った。
その後は、光都くんのことを話した。
約束は3つだ。
毎年の誕生日は、きちんとプレゼントを送ること。
光都くん、絵里さんがお互いに会いたい時には会わせること。
光都くんの写真を毎年送ること。
絵里さんはほんとは光都くんを愛してる。
だけど、どうしても浮かんできてしまう嫌な感情に耐えきれなくて手を上げたりしてしまったようだ。
そして、彼女は無理矢理されたあの時から
男性に触られるのが無理だった。何年もかけたが篤人だけには触れるらしい。そして、今はふたりともお互いに気持ちがあるらしい。
「俺さ、見てみぬふりしてた、光都のこと。おかしいとはわかってたのに。こんなんで子供好きなんてよく言えたよな。」
と今になって罪悪感に苛まれているようだ。
「あぁ。ほんとに最低だよ。でも、安心しなよ
俺とこれから幸せになるんだからさ。」
「あぁ。俺は絵里が回復するように
もっとちゃんと支えていくよ。」
そう言って俺たちは本当に別れた。
バイバイ、篤人。大好きだ。
いつか過去になるその日まで。
最初のコメントを投稿しよう!