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高校三年生になった頃、翼は凛に聞いた。
「凛は将来の夢とかあるの?」
「うん!私、看護師になりたいの。私、人よりも体が弱いでしょ?だからたまに病院に行くんだけど、すごくお世話になってる看護師さんがいてね。その人はいつも笑顔で優しくて、すごく素敵なの。いつか私もあんな風になりたいな!って思ってるんだ」
「いい夢だね。でも無茶だけはするなよ」
「はーい。だけど、母さんには女は働かなくていいって大反対されちゃって…」
「そんなことないのにね」
「だよね。そんなのその夫婦で決めればいいことだと思わない?まぁ翼みたいな人と結婚したら、働いてもいいよって言ってくれるんだろうな〜」
「あぁ、もちろん。大事なお嫁さんには自由に生きてほしいから」
翼が微笑みながら凛の方を見ると、凛は目を逸らした。凛の耳はりんごみたいに赤くなっていた。凛は自分の心臓の音をかき消すように、少し大きな声で話し始めた。
「そ、そういえば、私、やっぱり看護の専門学校に行くのやめたの!」
「え、どうして?」
「私、翼の言ってた大学に行こうと思ってて!翼みたいに頭は良くないけど、私一生懸命勉強するからさ!一緒に…」
「凛、本当にごめん。俺、アメリカに行くことにしたんだ」
「え?」
凛は思わず聞き返した。
「俺、本当は昔からずっとアメリカで働きたくて。日本の大学も考えたんだけど、やっぱり留学してあっちの大学に通おうと思ってて」
「そっか!そうだったんだね」
凛の笑顔が少しだけ曇った。
「あ、でも、別れるつもりはないし、俺はずっと凛の事を」
「私は大丈夫だよ!翼は私のことずっと好きでいてくれるんでしょ?遠距離でも上手くやっていけるよ!だから翼は自分の夢を叶えて!私も私の夢を叶える。だから、一緒に頑張ろ!」
凛の笑顔は今までにないほどに明るかった。
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