彼女との約束

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 二十年前、魔王が世界に災厄をもたらした。世界を覆い尽くすほどの強大な敵に彼女は一人で立ち向かって勝利した。  だが、彼女は激しい戦いの末に長い眠りについた。僕は彼女が眠る前に満身創痍の体で話してくれたことを忘れない。 「また世界が危機に瀕した時に今度はあなたが世界を救いなさい」  そして今、眼の前に復活した魔王がいる。巨大な口と手から禍々しい炎を出しながら迫ってくる。  僕は剣を構えると魔王の体躯に目掛けて走り出した。魔王が赤く燃える脈打つ腕で僕を捕まえようとした時、僕は地面を蹴って空高く舞い上がった。  空中から魔王の頭を眼下に見据えて、僕は剣を振り下ろした。大きく叫んで突き立てた。 「捉えた!」  魔王は僕の一撃で粉々に砕けた。大地が揺れて、魔王は倒れた。激闘が終わると、世界は平和に包まれた。僕は病院に走って行った。  病室のベットで昏睡状態の彼女に話しかけた。 「あなたとの約束は守りました。安心してください」  その時、聞こえるはずがないのに彼女が頬を緩ませて微笑みの表情を浮かべていた。
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