3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんなさい、ごめんなさい」
そしてボールを拾うとあわててその霊園から出て、公園に向かうのであった。
その日の夜。
タケシはすでに布団に入って眠っていた。
昼間の出来事は両親に話さなかった。話せば怒られると思うとなんとも言いだせなかった。
タケシが眠りに落ちて数時間たったころ、突然、彼の様子に異変が生じた。
なんだか息苦しそうで、うめき声を上げていた。
あまりの苦しさにタケシは目を覚ました。
すると薄暗闇の中で見たこともない髪の長い女性が馬乗りになって、タケシの首を力いっぱい絞めていたのであった。
「のどが・・・かわいた」
その女性がそんな言葉をもらしたと同時に、タケシは全てを悟った。
自分がボールを当てて割れたコップが供えてあった墓石の、その霊が復讐をするためにやって来たのだと。
タケシは首を絞められながら必死でその女性にあやまった。
ごめんなさい、ごめんなさい、許してください、必ず両親に話して新しいコップを買ってもらいますから。
その時、突然、部屋の中が明るくなった。
「タケシ、どうしたの?さっきから大声出して」
タケシの母親だった。異変を感じて駆けつけてきたのだった。
すでにタケシの首を絞めていた女性の姿は消えていた。楽に呼吸ができる。
助かった。
タケシは思わず、そうつぶやいた。
「タケシそんなに汗かいて、怖い夢でも見てたの?」
母親がそう尋ねながら部屋の中を見ると、ある異変に気付いた。
それはタケシの勉強机の上に金魚鉢が置かれていたのだが、水が全く入っておらず砂利の上で金魚が苦しそうにぴちゃぴちゃと飛び跳ねていたのだった。
「タケシあんた、まさか」母親が言う「いくらのどがかわいたからといって、金魚鉢の水を飲んだんじゃないでしょうね?」
ーおわりー
最初のコメントを投稿しよう!