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ガラスコップ
平日の昼間、公園の中では子供たちが楽しそうに遊んでいた。
そのうちの一人、タケシは小学二年生の男の子だった。勉強は苦手だが、体を動かして外で遊ぶことが何よりも好きだった。
今も学校が終わり、一度、家に戻ってランドセルを置くと、すぐにこの公園へとやって来た。他の子供たちもみんなクラスメートだった。
タケシたちはサッカーをして遊んでいた。みんな元気に走りまわり、ボールを追いかけていた。
やがて、タケシの足元へボールが転がってきた。シュートチャンスだと思って、タケシはゴールめがけて思い切りボールを蹴った。
しかしボールはあらぬ方向へ飛んでゆき、壁の向こうに入ってしまった。
その時、タケシは嫌な音を聞いてしまった。何かが割れるような。
壁の向こうとは墓場だった。いわゆる墓石がたくさん並んでいる霊園というやつだ。
ちょうど公園の隣にあり、壁一枚で隔てられていた。
「何やってんだよ、タケシ」友達が言う。「おまえ一人でボール取ってこいよ」
仕方なくタケシはその霊園に一人で向かった。
門は開いていた。だから難なくタケシは霊園の中に入れた。しかし、いくら昼間とはいえ、墓石がたくさん並んでいる、こんな場所に一人でいるのはタケシにとって怖かった。
早くボールを見つけて戻ろう。
そう思いながらタケシが霊園の中をうろうろしていると、遠くのほうにサッカーボールが転がっているのが見えた。
しかし、そのサッカーボールの周りに何やら、キラキラ輝くものも見えた。
タケシは近づいて、それをはっきりと見た。
地上に舞い落ちた星屑たち。
それはガラスの破片だった。
そうタケシが聞いた嫌な音とは、ボールが墓石に供えてある水もしくはお酒が入っていたコップに当たり、それが落ちて粉々に割れたのであった。
タケシの顔は青ざめ、コップを供えてあったと思われる墓石のほうを見ると、何度も頭を下げてあやまった。
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