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自分の中にまだ慈愛の心が残っていることに、あらためてほっとする。
お義兄さんも私の意図を理解してくれたようで、ふっと優しげに微笑んでうなずき、残ったピアスをポケットへ戻した。
こんなに幼い甥っ子も、高校生くらいになったらピアスをあけたりするのだろうか。今のところやんちゃ坊主になる気配はないし、託した姉の遺品は、女物感が強すぎる気がするけど。
一瞬でもこの子を恨むのは、今日で終わりにしよう。
ちょっと形は違うけれど、この子も姉と血を分け、同じかなしみを背負う、仲間なのだから。
「すずねーたん、こっち!」
甥っ子が、父親がいるのとは反対側を指さして催促する。どうやら挟まれて歩きたいらしい。
そんな私たちを、白い額縁の中から、姉が静かに見守っていた。
「はいはい」
素直に従って姉に背を向け、お義兄さんと同時に甥っ子の手を握る。
「じゃあ、途中まで一緒に」
「いっちょに!」
ふたりの元気なひと声を合図に、再び歩きだしながら、私は願った。
――今度は、嘘つかないでね。ラピスラズリ。
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