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そこには案の定、甥っ子の父であり、私の義理の兄である、彼が立っていた。
父の姿を認めると、甥っ子は私の手を離し、てててとそちらへ駆けていく。
歩み寄ってきて隣に並んだ息子の手を取ろうとした彼は「あっ、そうだ、スズちゃん」と思い出したように言って、喪服のポケットを探った。
「これ」
程なくして差し出された彼の手のひらにあったのは――銀色の立爪で固定された、深い青の球体。
「三回忌だからと思ってあらためて遺品整理してたら、出てきたんだ」
あの日、沸き上がるように憧れた星空が、ふたつ。
すうっと一筋、涙がこぼれた。
そういえば、姉の葬儀でちゃんと泣いた記憶がない。なにがなんだか、分からなかったから。
「和音、あの日から一回もこのピアスはつけてなかったよ。金属アレルギー対応だしシャフト? も太めだし、お風呂なんかで多少劣化はするだろうけど、ファーストピアスにも使えるからって」
シャフトとは、ホールに挿し込む軸の部分のこと。
シャフトが細いとホールが安定しづらいので、ファーストピアスは太めのものが好まれるのだ。
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