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「ほんとになんでも分かっちゃうんだなぁ。和音、言ってたもんな。『あの子は目ざといから絶対気づく』って」
それまで玄関から私たちのやり取りを微笑ましげに眺めていた男性が、言った。
聞けば、ピアスホール自体は一年ほど前からあいていたのだが、こんなふうに羨ましがられると困るから、私の前ではつけないように心がけていたのだという。
だけど、今日は特別な日だから、おめかししたかったんだって。
あんなにあっさり了承したくらいだ。きっと私があけたいと言い出すことも、それに対する返答も、想定済みだったのだろう。
今にして思えば、ちょっぴり悔しい。
「やっぱ、きょうだいっていいね。俺、ひとりっ子だから」
玄関の彼は、しみじみ重ねた。
――この人が、おねえちゃんのダンナさんになるんだ。
私も、しみじみ思った。
私とは、去年のお盆と、年末年始に会っただけ。今日で三回目。名前は……えっと、ソ、ソウ……そうだ、ソウシ。
くしゃくしゃの黒髪がちょっとカッコ悪いけど、ソウシと話してるときのおねえちゃんはいつも楽しそうだから、まぁ任せてやってもいい。
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