嘘つきなラピスラズリ

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　今まで何事も順調で完璧にこなしてきた姉にとって、唯一の苦労といっても過言ではない。
　本人に言ったらそんなことないって笑うんだろうけど、少なくとも私にはそう見えていた。
　大変な思いをしてやっとできた初めての子。元気に産まれてくるといいね。
　二月の終わり頃が予定日だから三月一日の私の卒業式には来られないだろうし、卒業直後のピアスデビューも厳しいかもしれないけど、もうこの際、気長に待つよ。

　まだまだ先だと思っていた半年後はあっという間にやってきて――卒業式当日。
　私は正直、それどころじゃなかった。
　昨日の夜中、姉が産気づいたのだ。予定日より三日遅かった。
　想史(ソウシ)――お義兄さんと一緒に急いで病院へ向かっていったが、近年流行している新型ウイルスの影響で、立ち合いできるのは分娩室のみだという。
　私の卒業式も同様で、在校生は参加しないし、出席できる保護者も各家庭につきひとりだけ。当初より緩んできているとはいえ、感染対策のための規制はまだまだ厳しい。
　姉は今頃、ベッドの上でひとり、耐えがたい激痛にもがき苦しんでいるのだろうか。