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 法要を終え、次は会食かと思いながら席を立ったとき、 「すずねーたーん」  黒いポロシャツに黒いズボン姿の男の子が、こちらへ駆け寄ってきた。  ひざにぽふっと抱きついてねだるような上目遣いで見つめられ、その小さな体をそっと抱き上げる。  昨日で二歳になった甥っ子は、舌っ足らずでつたないながらも、たくさんの言葉をしゃべるようになった。  目が合うと、無邪気にくしゃっと笑う。  かわいさに頬が緩む一方で、  ――この子さえ、いなければ。  あらぬことを考えてしまう自分に気づき、心の中であわてて(かぶり)を振った。  ***  一回り年上の姉は、私の憧れだった。  優しくて、絵に描いたような美人で、もちろん成績優秀で。年が離れているせいもあるけど、私を怒ったことなんか、一度もなくて。  シングルで忙しい母に代わって、私の面倒をよく見てくれる。  そんな彼女が右耳に小さな星空をふたつ、つけてきたのは、私が八歳のときだった。 「おねえちゃんの耳、なんかついてるー」  姉は高校卒業と同時にひとり暮らしを始めたが、この日は結婚の挨拶と両家顔合わせを兼ねた食事会のために帰ってきていたのだ。
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