二人しかいない兄妹

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二人しかいない兄妹

 今思い出せば二つ下の可愛い妹だった。  小さいころから俺の後ろをくっついてくる様子はまるでアヒルのヒナのようで、どうやら特別なことをしたわけではないけれど俺に懐いているようだった。時々面倒臭いなと思っていたけれど、仕事の忙しい親に代わってなんだかんだ妹のことを世話していたものだ。俺と朱莉はいつも一緒だった。  朱莉は俺といるのが嬉しいようで、一緒に遊んでは俺をからかって笑っていた。兄はおもちゃじゃねーよなんて言って、二人で笑ったっけ。俺も妹と遊ぶのを楽しんでいた。子どもの頃の記憶にはいつも朱莉がいた。息をするのと同じくらい当たり前のことだった。  あれは俺が小学校四年の頃だっただろうか。小学校近くの公園で俺と朱莉はよく遊んでいた。老朽化といわれて取り壊されたその公園のジャングルジムは懐かしい。俺の後ろを歩いていた朱莉は駆け出してジャングルジムに走り寄って行き、ランドセルを放り投げてジャングルジムに登っていくのだ。 「お兄ちゃんどっちが早く登れるか競争だよ!」 「またかよ。それに朱莉、先に登り始めるのは卑怯だぞ」  小さな体にはまだそのジャングルジムは大きすぎた。俺に競争を挑んでおいて朱莉はいつも苦戦する。足をかけようと大きく振り上げた足も届きそうで届かない。もたもたしている間に俺は朱莉を追い抜いててっぺんをとる。 「やったー! いっちばーん!」  そもそも俺は運動神経がよかったから妹に負けるはずなかった。負けず嫌いな妹は、頬を膨らませて無理矢理登ってこようとする。その様子に俺はいつも笑いを堪えていた。  ついに朱莉は一段登ることができた。手に力を入れ、兄がいる高いところを目指してさらに登ってくる。と、その時だった。 「あ!」  俺もあっと声をあげそうになった。朱莉は両手を離してしまい、そのままジャングルジムから落ちて尻餅をついてしまった。 「大丈夫か?」  ジャングルジムから急いで降りた。実はこれもいつものことで慣れていた。朱莉は自分で起き上がったものの、足首を痛そうにしていた。今回は本当に痛そうだ。 「足首捻った」
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