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「弘樹どうした? あ、飲み会の出席の件?」
電話の向こうがガヤガヤとしている。またサークル仲間とボウリングでもしているんだろう。ボールが転がりピンに当たる爽快な音がする。
「ああ、そう。今回も出席で頼むわ」
「そう言うわりには乗る気じゃなさそうじゃん」
服部は電話越しに笑っていた。
「行く気満々だよ。何? 今の俺そんな暗い声してる?」
「まあな、いつもの弘樹のテンションはどこいったんだって感じ」
俺が明らかにわかりやすいのか、服部が敏感なのか。どちらかというと服部は人の顔色や声音で機嫌を見たり空気を読んだりするタイプだ。
「どうかした?」
いかにも心配そうな声に応えたくなる。
「いや、さっき変な噂聞いてさ」
「変な噂?」
これだけじゃ内容わかんないよな。
「妹と同じ学校で同じ部活の女子が立ち話してたのを聞いたんだけどさ、どうやら俺の妹が高校でいじめられてるらしい」
女子高生二人からそれ以外はあまり聞けなかった。聞き出すこともできなかった。
「え、やべえじゃん。大丈夫?」
やべえ? 何が?
大丈夫? 大丈夫って何が?
ああ、こういう話には慣れていない服部にはびっくりさせたんだ。
「妹が? どうせいつものことだよ、大丈夫大丈夫」
「本当か? 妹ちゃんの話ちゃんと聞いたれよ?」
何でこんな深刻な声で言ってくるんだろう。
「話していた女子たちの話を聞くとさ、妹は『グループを乱すタイプの不思議ちゃん』だって。そういえば妹が中学の時にもあったんだよな。女子ってグループで付き合うって言うじゃん? 自分達の意見と違うと仲間はずれにするんだって」
「へー、女子って面倒くさいな。俺、姉も妹もいないからわからんわ」
俺の明るさを取り戻した声に服部は少し安心したような様子だった。
「面倒臭いだろ? 側から見ていて、女子って相変わらずガキっぽいよな。高校生にもなって」
「まあその妹ちゃんのいじめは……」
「放っておけば解決するでしょ」
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