赦し

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赦し

「だから『償い』をしている。本当にいいことをして回っている。妹にしてあげられなかったようにさ。俺の罪は重いんだ」  俺の罪は重い。 「そうだったんだ……そんなことがあったんだ。それが堀越くんの悩みだったんだね」  風が冷たい。地面も冷たい。 「話してくれて、ありがとう」  一瞬初夏の暖かさが戻ってきたような。北野はなぜか首を縦に何度か振った。まるで何かに納得したように。 「それで、いいことをしてるんだね。妹さんのためにもさ」  北野が俺のことを見透かしているように言ったので思わず聞き返す。 「いいこと?」 「私、知ってるよ。この前帰る電車が一緒だった時に、妊婦さんに席を譲ってたこと。これは駅のホームで待っている時に見たんだけど、目の見えない人が通るときに邪魔になっちゃうからって点字ブロックの上に置かれていた障害物を移動させていたこと。心理の授業でも筆箱を忘れた隣の知らない子にペンを貸してたよね。それからそれから……」  え? ど、どれだけ見られるんだ? 「なんで知っているの?」  嘘がなさそうな澄んだ目で言った。 「空から見てた」 「え?」  一瞬俺の頭に朱莉が浮かんだ。空にいるだろう朱莉が。 「嘘」  ……何考えてるんだ俺。北野は北野に決まってるだろうが。
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