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「ふーん。これで陵王ねぇ」
後日送られてきたお見合い写真を見て、薫ちゃんは鼻を鳴らした。
「まあ、イケメンっちゃあイケメンだけど……。薫ちゃんの方がずっと美人だよ!」
「そうでしょ? そうよね!」
なぜか二人してホッとした。
「お見合いには行くけど、縁談を断ってくるだけだから。薫ちゃんは心配しないで」
「あたしは何も心配なんかしてないわよ!」
ムキになる薫ちゃんは本当に素直じゃない。
「私たちの最強コンビは永遠だからね!」
私が安心させるように言うと、薫ちゃんは「ああ、そっち?」と意味不明のことを呟いた。
お見合い当日、私は本家で亡き伯母さんの本振り袖を着せられた。
「別に二宮家と対決しに行くわけじゃないんだから、自分の振り袖でも良かったんじゃない?」
お母さんに帯を締めてもらいながら尋ねると、「ダメよ」と一蹴された。
「相手は悪霊を操るっていう噂のある四男坊なのよ? せめて姉さんの着物で防御しておかないと」
お母さんの話は初耳のことばかりだ。
「え? そんな噂があるの? 悪霊を地獄に追い払うだけじゃなくて、手先みたいに操るってこと? でもって、伯母さんの本振り袖を着るのはこれが超お高い逸品だからじゃなくて、これに守ってもらうってこと? いくら伯母さんが辻堂家随一の霊能力者だったからって、死後も着物にそんな力があるもの? グエッ」
矢継ぎ早に質問を繰り出すと、お母さんに帯をギリリと締め上げられて息が止まった。
メイクとヘアアレンジはハトコの紗奈ちゃんがやってくれた。
薫ちゃんと同い年の紗奈ちゃんは本職が美容師さんなので手慣れたものだ。
「優ちゃんは顔立ちが整ってるから、物凄い美人さんに仕立ててあげる。四郎なんかに負けちゃダメよ」と、なぜかこっちは美貌対決になっている。
「私はただ断りに行くだけなんだけど」
苦笑いする私に、紗奈ちゃんは「誰もそうは思ってないわよ」と耳打ちした。
「婆さまたちはうちのお父さんに二宮家との契約書を作らせてた」
「あ、紗奈ちゃんのお父さん、弁護士だから?」
「そ。優ちゃんたちが結婚したら、依頼を両家の間でどう配分するか揉めそうだからね」
「結婚しないって言ってるのに!」
うんざりして口を尖らせた私に、紗奈ちゃんは「でもさ、優ちゃんにとってもいい話じゃない?」と言ってきた。
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