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ネーム
その日は、季節がタイミングを合わせたかのように、
見事な満開の桜だった。
小学校の卒業式。
私達は、校門の前で別れを惜しんでいた。
ひらひらと宙に舞う花びらを眺めてはいるが、
溢れる涙はこぼれてしまう。
「泣かないっていったじゃん」
そこには、目を真っ赤にした親友、白花ひかりの姿があった。
「ひーちゃんだって」
彼女の方が、私よりもすごくひどい顔をしているはずだ。
だけど、それを確かめることはできない。
それくらい視界が滲んでいた。
握っていた彼女の手がするりと抜ける。
阻止するように、とっさに力を入れた手は、
残っていた温もりだけを握りしめる。
「そろそろ、いかないと」
時間は迫っていた。
彼女とは、同じ夢を語り合ったから、
ずっと一緒だと思っていたのに、どうやら違ったらしい。
彼女は、遠くの私立中学に進学する。
だから、これが最後だった。
そう思うからこそ、別れを切り出せないでいた。
すると、ひーちゃんがもう一度、私の手を取り
「離れちゃうけど、ずっと親友だから」
私は嬉しくなって、彼女に飛びついた。
「うん。約束だよ」
あれから、四年の月日が経過し、私は高校二年生となった。
そして、あの約束は今となっては、日に焼けた絵画のように色あせていた。
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