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下書き
「あれ、絶対に気分で選んでる」
授業が終わり、個人面談に呼ばれた私は、
担当の田島先生に不満をぶつけていた。
試験のときに紙コップを配っていた先生である。
「気になるのも分かるけどね。若竹先生は、絵に嘘はつかないよ」
「へぇ、かばうんだ」
私の必死な訴えに、先生がまともに取り合う気配はない。
それもこれも、手元の資料に集中しているからだろう。
それは入学時に提出した書類と、今回の作品だった。
しばらくして、先生は顔をあげた。
「君はどうして絵を描くのかな」
「漫画家になりたいからです」
私の夢は、昔から変わっていない。
「なら漫画家になれたら、描くのを辞めるの」
「えっ、辞めるわけありません」
「だったら、漫画家になった後のモチベーションは何」
「えっと、それは……」
思考が停滞する。
夢を見つめて走ってきたけど、漫画家になって何をしたいんだろう。
お金がほしいのだろうか。
それはちょっと、違う気がする。
「ごめん。意地悪なことを言ったね」
先生は気にしないで、と優しく言ってくれたが、思いの外ショックは大きかった。
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