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「それから、君がBクラスになった理由は分かるかな」
「あの男子が」
「違う。それは言いがかりだよ」
先生は真っ直ぐな瞳を私に向ける。
その強い眼力に、思わず主張を引っ込めた。
「君がBクラスになった理由は、圧倒的でなかったからだ」
「圧倒的?」
先生はうなずいて、私の絵を差し出した。
「あのとき、私なら君の絵を選んだかもしれない」
「じゃあ、どうして」
身を乗り出すと、先生は私を抑えるように手のひらを向ける。
「だけど、若竹先生は君を選ばなかった。
つまりね、君と彼の作品との実力差は、好みで左右される程度なんだ」
ようやく、私は自分の未熟さを実感する。
AかBで悩まれるくらいではダメなんだ、と。
「もっと努力しろということですか」
「そうなるね」
「分かりました。もっと頑張ります」
謙虚にひたむきに努力を続けよう。そう心に刻み込む。
「うん。期待しているよ。だけど、みんなそう言う。
みんな頑張る。周りと同じ努力で差はつかない」
「なら、私はどうしたら……」
次に先生が差し出したのは、この予備校のチラシだった。
「スペシャルプランですか」
それは、より手厚いサポートで、授業数も多くなり、
個別指導にも時間をかけてくれるという、たいへん魅力的な内容だった。
「一人の力には限界があるけど、先生は君の力になれると思うよ。
漫画家になりたいんでしょ」
そうだ。私は漫画家になりたい。もっと上達したい。
ここには、それを助けてくれる人がいる。
努力した分だけ成長できるなら、迷うことはない。けど、
「ちょっと、考えさせてください」
「そうだよね」
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