2人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、先生からの熱烈な推薦と、両親の後押しに押し切られる形で、
プランのアップグレードが決まった。
踏ん切りがつかない私には、ちょうどいい強引さだったように思う。
そして、それは効果覿面だった。
先生は、まず、私に課題を与えた。
しっかりと観察して、形を捉え、
時間がある限り、何度も修正するという単純なものだ。
たったそれだけなのに、私の絵は見違えるほど上達した。
目が肥えてきたのか、最初の紙コップの絵が恥ずかしく思えてしまう。
こんなに簡単だったのか。
先生のアドバイスでコツを掴み、さらに絵にのめり込むことになった。
ある日、予備校にて、いつものように絵を練習していると、
後ろから声をかけられた。
同じBクラスのクラスメイトだ。
「これから、みんなで美術館に行くんだけど、
一緒に来ない。紺青さんとお話してみたくて」
「ごめん、今いいところだから、やめとく」
私はすぐに断った。
彼らはノーマルプランの学生たち。
私が練習している間に、遊んでいればいい。
そんな時間があるなら、絵に使いたい。
「そ、そうだよね。……がんばってね」
教室を出る彼らの中から、「なんだよあいつ」という声が漏れ聞こえる。
そんなことを言うなら、最初から誘ってほしくなかった。
私の態度が少し悪かったかもしれないが、
私だって、傷つけようとしたわけじゃない。
モヤモヤとした気持ちが、晴れやかな心を曇らせる。
けど、そんなことはどうでもいい。
絵が上達している。
その実感があればよかった。
この場所で大切なのは、人間関係ではなく、絵と本気で向き合うことだから。
私は一人でも前に進んでいく。
絵の上達はさらに加速し、季節は冬へと突入する。
私にとっての二回目の、クラス替え試験が明日に迫っていた。
最初のコメントを投稿しよう!